ノンフィクションの話

 先日俺の仕事場で事故が起きた。
何時もの様に昼食を取っていると、ドコからとも無く聞こえるけたたましい救急車のサイレンの音。
コレだけ車の通る場所だから事故の1つや2つも起きるのだが、今日の音はやたらとデカい。
そして一番音が大きくなった時に音が鳴り止んだ。
 数分後職場の仲間が部屋に入ってくるなり「グロ画像が見れる」と一言。
部屋から出ようものなら窓の回りに人の群れ。
事もあろうに事務所の目の前で事故は起きていた。
☆は某大型企業のスタッフ、携帯・よそ見・ノーヘルのトリプルパンチ。
不運な事に、ガイシャはフォークの下敷きにされ引きずられ、加害者は瞬間気付かず回りの女性の悲鳴で気付いたらしい。
俺が降りた時には被害者は運ばれ、加害者は道の端で頭を抱えていた。
数分後警察が訪れ、調査が始まり空港内は交通規制。
 現場にいた仲間に聞くと事故直後、被害者は人とは思えぬ痙攣を起こし、体半分がフォークの下から出ていた。
その頃にあった脈は次第に弱まり、救急車が到着する頃には既に脈はなかったと言う。
警察の実況見分の行われている時に連絡があり、被害者は搬送先の病院で絶命した。
結局最悪な形となり、俺の目の前で業務上過失致死の事故は終了した。
業務の為とはいえ、ルールを幾つも侵し、最終的には自らの人生すらも滅ぼすこととなった加害者。
テレビクルーも来る程の大きな事故となり、翌日の朝刊には本名付きで記事が乗ったという。
目の前で2人の人生が終わる瞬間を見てしまった。
たかが携帯1本の為に1人の人生を終わらせ、自らも地獄に追いやってしまった加害者。
何よりも尊い物のはずなのに、壊れる時はアッサリ壊れる。
人の命のなんと脆い物か。
あの道を通る度あの残された血痕を思い出し、自らもあのような事は絶対に起こしてはならないと心に誓った日だった。