ギャグのギャグ襲……なんちて

最近読んでいる漫画、喧嘩商売が面白すぎる。
作者はジャンプで漫画「幕張」を連載した木多康昭
 この作者の作品と言えばブラックユーモアと下ネタ、正にその一言に尽きる。
ジャンプ時代から、同誌他誌問わず作品のパロディ、むしろパクリ(悪い方向で)を使ったり芸能ネタ、編集部ネタ等をふんだんに使い各方面からお叱りの言葉を受けていたようだ。
何時しかジャンプから捨てられ、マガジンに移動したはいいモノの、マガジンでもその作風は変わらず、SMAPの森をネタに使ったり休んでもお咎めを受けない人気漫画家達に怒りを覚えそれをネタにしたりと相変わらずの暴走っぷりであっという間に打ち切りを食らう事となる。
 それから数年、今度はヤングマガジン喧嘩商売を引っさげて現れた。
反省の色無しどころかたけしの作者を女子高生ハンターのしまぶー先生と言ったり、遂に宮崎県知事、極楽山本までも登場させている。
 しかし、この作品の本当の魅力はそこではない。
確かに、それらのブラックジョークや下ネタには笑いを覚えるが、それ以上に喧嘩シーンの完成度の高さに圧倒される。
あくまでも試合ではなく喧嘩なのである。相手の隙を付くための巧みな話術や心理戦。
急所、目潰し等の大凡普通の戦いでは見せないような汚い手を使い、喧嘩を有利に進めていくために周りのありとあらゆる物を使う戦略。
それらが実に見事に描かれているのだ。
正直この作品ほど「死」を近くにイメージする格闘漫画を見た事が無い。
ドラゴンボールやバキよりも圧倒的に死を近くにイメージする。
そのリアリティさに、何時しか非常に楽しみな作品となっていった。
 そして先日、最新12巻が発売されたのだが、驚いたことに泣かされた。
この作品でこのような展開になるは思わなかったことに対する驚き、話的にはその辺にありそうな悲しげな話なのだが、まさかこの作品でそのような展開になるとは思ってもいなかった為、つい目頭が熱くなってしまった。
 以前、芸能雑誌のインタビューに志村けんがこう答えたことがある「人は泣かせるよりも笑わせることの方が難しい」
そのことを体現したのかはわからないが、そのインタビューに答えた後、志村けんのたいじょぶだぁ上にて、30minほどの尺を使って悲しげな話を流したことがあった。
それは、貧乏な家に住む志村けん扮する中年の男がある雪の夜に吐血し倒れ、過去のことを思い出すと言う話なのだが、その劇中台詞は一切無く、ただ音楽が延々と流れ続けているのである。
その悲愴的な音楽と全て動作だけで描かれる話を未だに覚えている程にインパクトの強い作品だった。
実際志村がどのような気持ちであの作品を作ったのかは全く不明だが、今になって思うと、笑わせる事の出来る人間は他の感情を揺さぶる事など容易いと言うことを見事に体現していた作品と言えるだろう。
 同じように、以前ギャグ漫画として売っていた人間が、ヤング誌に移動し成功を収めている作品も多々ある。
小林よしのりゴーマニズム宣言に始まり、江川達也東京大学物語古谷実ヒミズ等、実に魅力的な作品に溢れている。
自分個人としては、つるピカハゲ丸のむらしんぼ辺りがとんでもないクソ真面目な作品を書いてほしいと思ったりするのだが、それは叶わぬ夢だろうか?